Nikon Imaging
Japan

Lesson21:最適な「絞り」の見つけかた

今回は、これまでレンズレッスンでも何度か取り上げてきた「絞り」についてのお話をしたいと思います。
写真の“ピント合わせの範囲”を決めるためにとても大切な役割を担っている絞り。被写体のどこまでにピントを合わせどれくらいまでボケさせるのか、絞りを理解することで、被写体や写真の仕上がりイメージに合った適切な「絞り値」を選べるようになります。自分にとっての“最適な絞り”を見つけてみましょう。

絞りとボケの関係

まずは“絞りとボケ”の関係について、簡単におさらいしましょう。 絞りとはレンズの中に備わっている、円弧状に並んだ数枚の絞り羽根からなる機構のことで、中心に穴が空いています。この穴を大きく開き光を多く取り込んだ状態を“絞りを開く”と言い、穴を小さくした “絞りを絞る” 状態にすると、取り込まれる光の量は少なくなります。

絞りは、このように円弧状に並んだ数枚の絞り羽根からなっています

絞りは穴の大きさにあわせ「F2.8」「F8」「F16」など「絞り値(F値)」とよばれる“Fといくつかの数値”で表します。絞り値が小さくなるほど穴は大きく開き、ピントの合う範囲は狭くボケは大きくなります。絞り値が大きくなるほど穴は小さくなりピントの合う範囲が広く、ボケは少なくなります。

絞り値とボケの関係図

このように並んだクレヨンを、絞り値を変えながら撮影してみましょう

f/4 絞り値(F値)…小さい
穴の大きさ…大きい
(絞りを開く)
取り込む光の量…多い
ピントの合う範囲…狭い
ボケかた…大きくなる
f/8
f/11 絞り値(F値)…大きい
穴の大きさ…小さい
(絞りを絞る)
取り込む光の量…少ない
ピントの合う範囲…広い
ボケる範囲…小さくなる

絞り値(F値)についての詳細はこちら

たとえば人物や花、食べ物や小物などの背景をボカして撮影したいと思ったとき、カメラ任せの設定でもキレイに撮影することはできますが、ボケかたを自分でイメージして表現できるようになれば、より撮影も楽しくなるはずです。

ボケかたをイメージしてそれに合わせた撮影をするときのカメラの撮影モードは[A:絞り優先オート](選択した絞り値に対してシャッタースピードを合わせてくれるモード)がおすすめです。自分のイメージする「ボケ」を確認するために、まずは絞り値の変化でどれくらいボケかたが変わるのか、被写体ごとにみてみましょう。

背景をボカす撮影の絞り値

ポートレートや花などの撮影をする場合、絞り値によってどのくらい印象が変化するのか見ていきましょう。

絞り値:f/4

絞り値:f/5.6

絞り値:f/8

絞り値:f/8

絞り値:f/11

絞り値:f/16

こちらは標準ズームレンズで絞り値を最小値から最大値まで1段ずつ変えながら花を撮影したものです。まず、絞り値によって変わるボケかたに注目してみてください。たとえば“背景をボカして花を印象的に写したい”と思ったとき、自分好みの絞り値はどのくらいなのか(花と背景のボケかたのバランスはこれくらいがいいな、絞りの最小値(開放絞り値)までボカすよりも、少し絞ったくらいが好みだな……など)を考えながら見比べてみるとよいでしょう。
次に、ピントの合いかたをチェックします。今回は花の花芯にピントを合わせ撮影しています。f/4とf/16の拡大写真の葉の部分を比較すると、f/4はボケているのに対し、f/16では輪郭がはっきりと見えているのがわかりますね。ピントの中心からどのくらいの範囲まではっきり見せたいのかを意識しながら絞り値を変えてみましょう。明るいレンズでの撮影やクローズアップ撮影を行った際などはよりボケが大きくなりますので、撮影の前にピントの合う範囲をしっかり確認しておくとよいでしょう。
今回は花を例に取り上げましたが、人物のポートレート撮影の場合は目にピントを合わせるのが基本となります。目だけでなく顔の部分など、意図した以上にボケてしまっていないかを確認し絞り値を決めるとよいでしょう。

風景写真の絞り値

次に、風景のような大きな被写体の場合絞り値の違いで表現がどう変わるのかを見てみましょう。

絞り値:f/4

絞り値:f/5.6

絞り値:f/8

絞り値:f/11

絞り値:f/16

絞り値:f/22

奥行きのある風景を、標準ズームレンズで絞り値を最小値から最大値まで1段ずつ変えながら撮影しています。ピントは写真中央より少し下の部分に合わせています。ピントを合わせた位置を中心に、手前や奥部分のボケかたを比べてみると、絞りを絞るほどに全体がシャープになっていくのが分かると思います。夕景など光量が少ないシチュエーションでは絞りをあまり絞れないこともあります。風景写真では全体をしっかりとらえられるように絞って撮影するのが基本となりますが、かといって絞りすぎると悪影響を受ける場合もあります。

この写真は、上の風景写真の一部分を拡大したものです。

絞り値:f/11

絞り値:f/22

見比べてみると、絞り込むことで全体がシャープになっていくはずが、絞ったことで細部がぼやけてしまっているのが分かると思います。これは「回折現象(小絞りぼけ)」といって、光の性質と絞り羽根の性質が引き起こす現象です。
レンズの構造や撮影シチュエーション、焦点距離などによっても異なりますが、絞り値が大きくなるほどに発生しやすくなる現象です。風景写真ではこうしたレンズの特徴に注意を払いつつ、最適な絞り値を見つけるとよいでしょう。

周辺光量落ちとは

周辺部分の光量不足により、写真の周囲が暗く写ってしまうレンズの特性によって起こる現象を「周辺光量落ち」といいます。レンズごとの特性や撮影シチュエーションによって起こる度合いは変わりますが、もし撮影した写真に周辺光量落ちが見られ気になる場合は、ある程度絞りを絞ることで目立たなくなることがありますので、試してみてください。
なお、デジタル一眼レフカメラでは、カメラ内にある[ヴィネットコントロール]機能を使って補正したり、後から現像ソフトで修正したりすることも可能です。

絞り値:f/4

絞り値:f/5.6

絞り値:f/8

絞り値:f/11

夜景撮影の絞り値

最後は、夜景での絞り値を比較してみましょう。明るい単焦点レンズを使って、絞り値を最小値から1段ずつ変え撮影しました。

絞り値:f/2.8

絞り値:f/4

絞り値:f/5.6

絞り値:f/8

絞り値:f/11

絞り値:f/16

夜景も風景写真ですので絞りは絞って撮影するのが基本となります。夜は光量が少ないため手持ち撮影などでは手ブレしてしまいあまり絞り込めない場合がありますが、“これくらいまでシャープに写っていれば問題ない”という絞り値を探しておくことが大切です。絞り値が大きくなると光量が減るためシャッタースピードは遅くなりますので、撮影時は三脚を利用するとよいでしょう。

夜景撮影時に絞り値を変更することでもうひとつ変化するのが、強い点光源を撮影したときに光の線が放射状に伸びたように広がる「光芒」の写りかたです。夜景に華やかさを加える光芒は、絞りを絞るほどにはっきりと写るようになるため、“どれくらいはっきりと光芒を見せたいか”も絞り値を決めるひとつの基準となります。光芒の出かたはレンズによって異なりますので、手持ちのレンズで試してみてください。

レンズにはそれぞれ違った特徴があり、写りかたもそれぞれ違います。みなさんの持っているレンズでもぜひ、絞り値を少しずつ変えて撮影してボケかたなどのレンズの“くせ”を見つけてみましょう。「このレンズでこんな表現ができる」と分かると、より撮影が楽しくなることでしょう。