Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

山口 裕朗

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インタビュー

ボクシングに関わりながらも、僕はスポーツフォトグラファーではないと思っているんです。“ボクシング写真”として求められるのはパンチがヒットした瞬間かもしれない。でも僕なりのベストショットはそこではないんです。たとえば、相手にノックダウンされた選手が朦朧としながらロープをつかもうとする姿、試合を終えたレフェリーが、ジャッジの重圧から解放されフーッと一息つく姿、そういうシーンに胸を打たれます。自分の気持ちが揺さぶられる瞬間に出会えたとき、僕はシャッターを切っているのだと思います。

試合直後のボクサーを写したポートレートは、長く続けているシリーズ作品です。いい試合をすればするほど、勝敗に関わらずたまらなくその選手の顔が撮りたくなる。それがどんな表情だとしても、いい試合の後の選手は本当にいい面構えをしているんです。このポートレート作品は、自分の中で一番力のある写真だと思っています。勝者か敗者かを想像したり、表情から心境を読み取ったり、見た人が1枚から様々に思いを巡らせることができる。そういう写真こそ力のある写真だと思うんです。

そういった意味では、スナップ写真も面白いですね。ここに掲載したのはニューヨークに住んでいた頃、毎日街に出てはどんなシーンに出会えるかと、その日の気分で選んだレンズをつけて撮り歩いていたものです。たぶん、撮られたものに特別な意図はないんです。見る人が写真から色々なことを読み解き、想像してくれれば、撮り手として嬉しいですね。

もともとプロボクサーだった自分が、次のステージとして選んだのが写真でした。ボクシング、スナップ、山や街の風景、阿仁マタギと様々なものを撮ってきましたが、自分が写真で何を表現したいのかと聞かれるとうまく説明できません。今は自分が何に興味を持ちどこに心が動くのか、それが知りたくて写真を撮っているのかもしれません。
世の中には損得やお金じゃない、ロマンに生きる人がいます。僕はそんな生き方に憧れがあり、命をかけたギリギリの場に身を置いていたボクサー時代は、何とも言えない充実感がありました。だから正直、撮り始めた頃は選手に対して羨ましさがあったのですが、いつからかそんな気持ちはスッと消えました。僕は今、選手から一番近いリングサイドで彼らの写真を撮ることができる。それはとても幸せなことだと思っています。

プロフィール

山口 裕朗(ヤマグチ ヒロアキ)

1974年、東京都出身。プロボクサーとして10勝(6KO)7敗の戦績を残し、引退後、日本写真芸術専門学校で写真を学ぶ。
ボクシング・阿仁マタギ・狩猟・山の風景・街の風景をライフワークとして撮影。2015年から2016年にニューヨークで生活し、ボクシング・MLB・MLSなどのスポーツを中心に撮影するかたわら、ニューヨークの街の風景も撮影。ボクシング世界チャンピオン、内山高志の軌跡を収めた写真集「漸進」を上梓。

Webサイト
http://foto-finito.com/