Nikon Imaging
Japan
At the heart of the image.

原久路 and 林ナツミ

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インタビュー

2年ほど前に東京から九州の別府に移住し、新しいスタンスで作品と向き合う中で取り組み始めたのが、少女をテーマにした撮影です。子どもから大人の女性へと変化する過程にある少女たちは、私たちにとって不思議で、崇高な存在に思えたのです。当初は1人の少女をモデルに、画を作り込んで彼女に役を演じてもらいながら撮影をしていたのですが、その制作過程の中で「役作りとは無関係の彼女の自然な振る舞いや表情の中に、本来私たちが写真に収めたかった崇高な瞬間がある」ということに気づいたのです。そこで、そのシリーズとは別に、よりスナップ写真に近い軽快なフットワークで少女を撮影するという、「少女シリーズ」に着手することになりました。

写真作品の醍醐味は、写真家の持つ企画意図を遥かに凌駕するような瞬間がそこに焼き付けられる“可能性”にこそあると考えています。撮影時はモデルとなる少女たちの自主性を重視し、撮影場所の選定、ポーズや表情も彼女たちの直感に従って決めることが頻繁にあります。そうすることで彼女たちの表情がより輝きを増していきます。この撮影方法はまさに私たちの限界を超越しているものだと感じています。また、1人のモデルを双子のように合成しベンチに座らせている作品がありますが、これはまだ自我が確立されていない、何にも縛られず自由な発想をする少女たちとの共同作業を重ねる中で新たに生まれたシリーズです。自分が2人に増えることに興奮し、様々なアイデアを出してくれる彼女たちとの本気のコラボレーションによって生み出される「双子シリーズ」。今後どんな展開を見せるか、私たちとしても目が離せません。

作品に込められたエネルギーは、最終的に写真家の私物化を超越して世界に還元されてゆくものだと思っています。私たちの最初のコラボレーション作品である『本日の浮遊』では、制作時に予想しなかった反応がネットを介して世界中から届き、それによって作品のコンセプトが熟成されました。今回ここで紹介した一連の作品も、撮影とほぼ同時にSNSで公開し、いわゆる「いいね!」の数が多かった10枚を選んで掲載しています。こうしたことは、作家の意図を超越する様々な可能性を含んでいると思います。世の中の美も醜もすべて光学的に捉えることができる、この偏りのない客観性こそ写真の持つ力だと私たちは思います。このシリーズが、そうした写真の力を存分に発揮できるよう、今後もコンセプトを深めながら撮影と発表を続けていきます。

プロフィール

原久路 and 林ナツミ(ハラヒサジ アンド ハヤシナツミ)

2013年より写真家ユニットとしてコラボレーション作品の制作に専念。2014年に東京から九州へ移住、大分県別府市を拠点に制作活動を行っている。 二人のユニット作品の新作はインスタグラムのアカウントで随時公開中。

公式インスタグラム
https://www.instagram.com/hisajihara_and_natsumihayashi/

原 久路

1964年東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業後、テレビカメラマンを経て、写真家に。1993年渡米。ニューヨークの映像制作プロダクションにてドキュメンタリー番組の撮影監督を務める。2001年に帰国後、フリーランスとなり写真作品制作を開始。2009年、写真作品シリーズ「バルテュス絵画の考察」を発表。現在まで世界各地で個展を行う。2011年から林ナツミの『本日の浮遊』で撮影技術を担当。2013年から写真家ユニット「原久路 and 林ナツミ」として活動中。

林 ナツミ

1982年埼玉県出身。立教大学文学部卒業後、同大学大学院で児童心理学などを学ぶ。卒業後は演劇スクールなどで演技を学びながら芸能事務所に所属、ファッション写真や写真家の作品でモデルを務める。2009年から原久路の作品制作でアシスタントを始める。2011年、自らのジャンプの瞬間を捉えた写真作品シリーズ『本日の浮遊』を自身のブログでスタート、現在は原久路とのコラボレーションとして制作を続ける。2013年から写真家ユニット「原久路 and 林ナツミ」として活動中。